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口腔顎顔面インプラント治療について  (3/6)

Ⅲ. 即時荷重インプラント

 オッセオインテグイションを基本概念とする骨内インプラントの大きな欠点は、長い治療期間、高額な費用などが挙げられている。
 そこで、ここ数年即時や早期荷重、抜歯窩即時インプラントが開発され、治療期間は大幅に短縮された。
 また即時や早期荷重可能なインプラントの安定度を客観的に評価する方法として、オステル(Osstell)が使用されている。これはインプラントの共鳴振動周波数分析(Resonance Frequency Analysis:FRA)を行う装置で、フィクスチャーやアバットメントに取り付けた振動変換器(transducer)(図22)が発する共鳴振動周波数を分析し、インプラント安定度指数(Implant Stability Quotient:ISQ)(図23)を測定するものである。ISQ値は、インプラント周囲の骨の高さや質、骨とインプラントの結合力によって変化し、1から100の数値で表示される。成功したインプラントはISQが65±5の場合に多く、埋入時のISQが65以上の場合は経時的にISQが変化しないかわずかに減少する傾向があり、埋入時のISQが50~60の場合には経時的にISQが上昇し、埋入時のISQが50以下の場合には失敗する傾向にあった。このような結果からISQが60以上で早期荷重が、60~65以上で即時荷重が可能と考えられている。

図22
図23
a ) ブローネマルクノバテム・ノバム

 このシステムは、1次手術から最終補綴までシステム化されているため、フィクスチャー埋入直後に術者可撤式の最終補綴の装用が可能となる。
 このシステムの主な治療ステップは、・フィクスチャーの埋入、・下部構造バーの装着、・咬合採得、・補綴装置の試適、・補綴装置の装着、である(図24)。
 適応症としては、下顎無歯顎で、オトガイ孔間が46mm以上、下顎骨を平坦に形成時に頬舌径が6.5~7mm以上、骨の高さが12.5~14.5mm以上あり、約2時間の手術が可能な患者である。 フィクスチャーの直径は4.5mmと5mm、長さは11.5mmと13mmが用意されている。
外科術式は、基本的にはブローネマルクシステム・インプラントの術式と同様で、次のようなステップで行う。
 ・粘膜切開後、頬舌径が約6.5mm以上、骨の高さが12.5mm以上になるように歯槽頂を平坦にし(図25)、ガイドテンプレートを試適し確認する(図26)。
 ・エバリューション・テンプレートを3本のガイドピンで固定する(図27)。
 ・ポジショニング・テンプレートの両端をガイドピンで固定、ドリルテンプレートと径2、3、3.5、3.8、4、4.2、4.4mmのドリルを使用し、中心部のみのドリリングを行う(図28)。径5mmのフィクスチャーを埋入する時には4.4mmまで、径4.5mmの場合には3.8mmまでのドリルを使用する。
 ・フィクスチャーを埋入、ポジショニング・テンプレートを外す(図29)。
 ・V・プレートを中心部のフィクスチャーと、その両側につける固定用スクリューに固定〔図30〕。
 ・両側のインプラント植立を同様に行い、V・テンプレーを除去し、粘膜切開を縫合する(図31)。
下部構造バーの装着は、フィクスチャー植立部位にシリコーンシートを置き、コンプレッションリングとテンポラリースクリュウで下部構造バーを装着、締め付けを行い(図32)アバットメントスクリュウに交換する(図33,34,35)。 下部構造バーに上部構造バーを仮止め固定し、咬合採得、人工のシェードとモールドを決める。 ノバムのフィクスチャーと下部構造バーのレプリカ、咬合採得したもの、対合歯の模型で咬合器装着(図36)。 上部構造バーに人工歯排列、歯肉形成を行い、口腔内で試適する。 上部構造を完成させ、スクリューで下部構造バーに固定し、完成する(図37)。
 インプラント埋入当日からインプラント義歯を使用し食事ができる、来院回数が少ないなど患者の満足度はきわめて高い。術後約1週目で、抜糸とシリコーンシートの除去を行う。

図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37

b ) IPI ( Immediate Provisional Implant )  暫間的なインプラントではあるが、安い、待機期間がない、簡単など今までにない、新しいタイプのインプラントである(図38)。 術式は簡単で、無切開で行う事も可能である。
 径1.5mmのツイストドリルで、深さ14mmまでドリリングを行い、長さ14mm、径2.8mm(スレッド部)のIPIを植立する(図39、40)。 ベンンディングツールを使用し、ヘッド部のベンヂィングを行い、コーピングをインプラントにセットし、使用中の義歯を削除、即時重合レジンで、コーピングを義歯にセットする(図41)。または、印象採取後、IPIのレプリカを利用し、模型上で新たに義歯を製作することも可能である。上顎では、無口蓋義歯にすることもでき、術直後から、インプラント義歯とし装用し、義歯の安定と維持が得られる。

図38
図39
図40
図41

c ) 抜歯窩即時用インプラントでは、Replace、Sophyなどがあり、日本でも臨床応用が開始されている。

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