インプラント周囲炎の発現のメカニズム  (1/2)

東京歯科大学歯周療法学講座
教授   山田  了

はじめに
現在、歯の欠損に対する歯科治療の選択肢の一つとしてインプラント療法が行われています。このことは、インプラント治療では、義歯のような違和感はほとんどなく、ブリッジにおける隣在歯や他の健全歯の切削の必要性がないなど多くの利点により広く取り入れられています。しかし、天然歯における歯周炎と同様にプラークによる炎症で発現するインプラント周囲炎が問題となっています。そこで、今回は新情報としてインプラント周囲炎の発症のメカニズムについてお話し、臨床におけるインプラント周囲炎の予防の一助にしていただきたいと思います。

1. プラークがインプラント周囲組織に及ぼす影響

1)インプラントと天然歯における維持機構の違い
 現在、インプラントは、一口腔内において天然歯と混在した環境で応用されています。しかし、天然歯は、歯肉、セメント質、歯根膜と歯槽骨で維持されていますが、インプラントでは、歯肉と歯槽骨とくに歯槽骨とインプラントとのオステオインテグレーションで維持されています。したがって、天然歯とインプラントでは、それぞれを維持している組織の構造のうえで大きな違いがあります。そこで、インプラント周囲炎を考える場合に天然歯と対比して考える必要があります。

 
図1. 天然歯の維持機構
天然歯は歯周組織で維持されています。
図2. インプラントの維持機構
インプラントはオステオインテグレーションで維持されている


2)プラークがインプラント周囲組織に及ぼす影響
 (1) 臨床所見とプラーク細菌叢との関連
  1,肉眼所見
 今回のインプラント周囲炎は、ビーグル犬にインプラント(Branemark system(BR)とIntegral(IN))を埋入し、その後、プラークコントロールを中止して軟食を与え6ヵ月あたえて発現させたデータです。

 
図3. 実験開始時
図4. 術後6ヵ月
インプラント 周囲に多量のプラーク沈着を認める

  2,臨床所見
 インプラント周囲炎における臨床所見にでの「プロービングの深さ」と「出血」の変化を直後、3カ月、6カ月でみました。「プロービングの深さ」は、術後6ヶ月でインプラント群が、天然歯に比較しポケットの深さを増加させ、「出血」も3カ月および6カ月共にインプラント群が出血傾向が大です。したがって、「プロービングの深さ」および「出血」ともインプラント群で大であり天然歯に比較しインプラント周囲組織には、強度の炎症の発現を生じていると考えられます。

 
図5. プロービンノ深さの変化(mm)
図6. BOPの変化

  3,細菌学的検査
 インプラント群と天然歯群におけるプラーク細菌叢の細菌学的検索では、両群間で大きな違いはなく、形態学的には、球菌の割合は日時に経過とともの減少し、変わって、運動性桿菌の割合が増加しています。したがって、インプラント周囲炎におけるポケット内細菌叢は天然歯と類似していることより、天然歯のプターク細菌叢が隣接するインプラントのポケット内に影響を及ぼすことは十分に考えられます。

図7. 顕微鏡観察による細菌叢の変化(%)

[ 1 - 2 ]


■□■ 最新情報履歴 ■□■


インプラント治療における画像診断
Ossseointegration獲得後に生じる偶発症と
インプラント・補綴装置のメインテナンス
βTCP・CMキチン複合材料への期待
骨増量法の現状と未来
口腔顎顔面インプラント治療について
インプラントの咬合
インプラント適応症の拡大のための治療オプション
骨内インプラントの選択
インプラント周囲炎の発現のメカニズム
下顎総義歯難症例へのインプラントの効用
最新情報トップへ